鳥の宿命 ハッカチョウ
朝夕に秋の気配を感じる10月。
とり子は住んでいる地区のクリーンキャンペーンに参加していた。
この辺りは程よく田舎だ。なんちゃって、本当はド田舎だ。
目の前には田んぼが広がっていて、いつもハトやカラスやサギ、ヒヨドリがいる。
季節によってイソヒヨドリやケリ、ヒバリなども見られる。
田んぼにいる野鳥をチェックするのは野鳥好きの日課にもなっている。
この日、草をむしりながら向けた視線の先には不思議な鳥の群れがいた。
カラスのように真っ黒な鳥たち。
カラスより小さくて、ハトほどの大きさだ。よく見ると羽の先に一箇所白い班がある。
とり子、こんな時はわくわくする。
見たことの無い鳥との遭遇なのだ。
すぐ近くで近所の男の人たちも、『あれ、カラスじゃないね、変わった鳥だなあ』と話している。
とり子はすぐに先生に電話した。
『先生、珍鳥です、早く来てください!』
先生はぜんぜん驚かない。『どんな鳥だい』
とり子の説明を聞き始めてすぐに、『それはハッカチョウというんだよ』と答えた。『そんなに珍しい鳥じゃないよ、今度連れて行ってあげるよ』
先生は数日後、時間を作ってくださり、姫路という町にとり子を連れて行ってくれた。広い河川敷は市民の遊歩道になっていて、その脇の工場の屋根に無数のハッカチョウがとまっていた。さすがにカーカーとは鳴かなかった。
カラスをはじめ黒い鳥というのはあまり『美しい鳥』とは言えない。
ハッカチョウは白い班があるだけで、かろうじて人間から嫌われずにいるのだろう。
とり子、鳥の持つ宿命というものを感じていたのであった。