アトリエ

とり子はアトリエで板にニスを塗った。

昔この辺りは別荘地として開発が始まった。

たくさんの人が電気も水道も通っていない山の中に土地を買ったのだ。しかし、住めるようにするには、ここは少し手間もお金もかかりすぎただろう。とり子がこのアトリエに来るまでの道中には、建てかけたまま途中で放置されたような、ログハウスらしきものがたくさんある。もう持ち主はここに来ることは無いだろう、荒れ果ててどうにもできない。

とり子は知人が昔建てたログハウスを修復しながら、ここをアトリエとして過ごしている。

野鳥が豊富に見られる最高の場所だ。アオジがチッチッとすぐそばの藪の中で鳴いていた。買ってきた材木すべてに、防腐対策でニスを塗るのが、案外楽しい作業だ。

こういう生活が向いているのだろう。とり子は自分は孤独好きだな、いや、人間嫌いと言うのかもな、と考えていた。

夏は夜空を見上げながらビールを飲む。花火もした。バーベキューもした。

冬は暖炉で餅を焼き、お湯割の焼酎や梅酒を飲む。

星空はきれいで、朝陽は格別に崇高だ。

 

今日は新しく作った眼鏡を受け取りに行き、イメチェンしたばかりだ。

この眼鏡で、洗練されたキュートなとり子になろうとしたのに・・・

ニスを塗る姿はほど遠いかもね。

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