ウミネコ
私の名前はとりのとり子。
完璧なアシスタントを理想とするが、現実はそうはいかない。
持って生まれたどんくささは、もう直らないのだ。
日御碕に、ウミネコを撮影に行った。
すごい数のウミネコだ。かもめのような鳥だ。
『ミャー、ミャー、と猫のような鳴き声だから、ウミネコというんだよ』
先生に教えてもらった。
なるほど、ミャー、ミャーとも聞こえる。
先生が撮影をしている間に、とり子はみかんをむいた。
早朝から撮影に出たので、先生もとり子も朝食を食べていない。
『先生、みかんどうですか』『ああ、有難う』
そう、間もなく食べようとした瞬間、トンビがかなり近くを飛んだ。
わあ、すごい近い!とり子は一瞬よろこんだが、さっと、みかんを盗られてしまった。
『。。。。』
『。。。。』
なんで、食べ物ってわかったんだろう。すごいな、トンビ。
カエルしゃぶしゃぶ
とり子は野鳥写真家の先生のアシスタント。体力はあるけど、どんくさい。
こんなとり子をアシスタントとして見てくれる先生は、変わり者だろう。
いや、アシスタントにまで上がっていない。アシスタントの、見習いだ、と言われてしまった。
5月、GWは見島で撮影だ。
先生はアカガシラサギを撮影していた。とり子も、カメラなどを持って先生に続く。
距離や、天気や、色んな条件の変化で、レンズ、三脚、カメラを使いわける。
すごい量の荷物になることもある。
水辺をアカガシラサギが歩いていた。水辺にちょん、とクチバシを突っ込んでは、小さな魚を食べている。
水面ばかりを見ていたアカガシラサギが、ふと土手に目を向けた。何かを見つけたようだ。
ぱくっ!
くわえたのはカエルだ。びろ~んと、足がクチバシから見えている。
アカガシラサギは、そのカエルを水にしゃぶ、しゃぶ、して、洗って食べた。
君でもやっぱり、泥は食べたくないんや。。。わかる、わかるで~。
ミサゴの巣とカラス
私はとりのとり子。先生は有名な野鳥写真家だ。
野鳥の見れるポイントや、栄巣、子育ての時期に合わせて全国の色んな場所にでかける。
GWは撮影のため「見島」で過ごした。
周囲22kmほどの小さな島に、渡り鳥が休憩に立ち寄るスポットだ。普段見られない珍しい種類の野鳥も見ることができる。
しかしながら、島はほとんど手付かずの自然で、道が無い。広大な山で珍鳥に遭遇できるのも、ラッキーなのだ。
ここ数年は気温の変化のせいか、見られる鳥が少ないとも聞く。
先生は滞在中、岬からの、ミサゴの栄巣を中心に撮影していた。
この日、いつも巣にいるミサゴがいなかった。親鳥の留守を狙って、1羽のカラスがやってきた。先生も、とり子も、なんだか嫌な気配がして、見ていた。
カラスは巣の中をゴソゴソ探りはじめた。『あっ!!』
カラスは、オレンジ色の、ピンポン玉ほどの卵をくわえ、飛び立った。
大事な卵を、盗まれてしまった。。悔しがっていると、またすぐカラスが戻ってきた。
残りの卵も持っていこうとしているに違いない。どうしよう!!
そう思った瞬間、先生がカラスに向かって怒鳴りだした。
『こら~!!やめろ、やめろ、こら~!!しっ、しっ、しぃ~っ!!』
岩場のミサゴの巣から、50m離れた岬のてっぺんで、先生は真剣だった。
カラスは、何かを感じ取ったのか?何も盗らずに飛んでいった。
『とり子くん、見たかい!追い払ったぞ!!!』
カラスはカラスだ、と思っているとり子は、まだまだ未熟だ。
先生が追い払ったのか、よくわからない。。。
トラクターとアオサギ
私の名前はとりのとり子。
野鳥写真家の先生のアシスタントとしては、まだまだ未熟だ。
今朝、とり子の部屋の、まん前の田んぼを、トラクターが行ったり来たりしていた。
トラクターのあとを鳥たちが歩いて追いかけている。からす、ムクドリ、アオサギだ。
掘り起こされて出てきた虫を、捕まえては、食べている。
とり子は双眼鏡をのぞいた。じっくりアオサギでも見てみるかな。
アオサギは、慣れているのかトラクターのタイヤのすぐ脇まで接近して、トラクターにぴったり付いて歩く。トラクターの前に回りこむことも。その度に、危ない!ととり子は思うけど、アオサギは上手くトラクターをかわすのだ。
サギは羽がきれいな鳥で、ながい羽は風が吹くとさらさらと揺れる。
先生の個展の作品の中にも、サギを撮った作品がある。
サギはさらり、さらりときれいな羽を揺らしながらせっせ、せっせと食事をしている。
とり子の視線を感じ取ったのか、野生の勘か、アオサギではなく、おじさんの方がとり子の視線に気づいた。あ~、やばい、やばい
おじさん、ちゃうちゃう、鳥、鳥見とるねん!
青野ダム ヤマセミとコーヒー
私の名前はとりのとり子。何をしてもどんくさい。
この私がアシスタントするんだから、拾う神あり、だ。
拾ってくれた神様は有名な野鳥写真家の先生。
5月。暑い。先生から『とり子くん、青野ダムへ行くよ』と連絡が入る。
青野ダムでヤマセミの撮影だ。
約束の3時、先生はもちろんまだ来ていない。あっ、そばの畦でキジが鳴いたわ!
とり子は双眼鏡を持って、キジの鳴き声のほうへ走った。
土手を上り、田んぼの畦を覗き込むと、キジは美しい光沢で草から体を半分だけ見せて歩いていた。
『キジも鳴かずば撃たれまい』ほんとに。とり子、キジ探すの得意なのよね~♪
この時季のキジを見つけるのは誰にでもできるということを、とり子はまだわかっていない。キジの雄は5月から6月の繁殖期には「ほろうち」と呼ばれる甲高い鳴き方を頻繁に繰り返す。縄張りを主張し、また雌への求愛でもある。
先生到着。『コーヒー、あるかい』先生に、はい、どうぞと渡したら、先生コップを助手席のいすの上に置いて、『あっ』。安定悪く、助手席にコーヒーをこぼす。
なんでそこに置いたん。。。。
あわててタオルでふいた。
『とり子くん、ぼくが運転するよ』『あ、ありがとうございます』
『おしり、濡れてないかい?』『あ、大丈夫です』
って、濡れとるわい!!!
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